専攻医対談
優れた外科医のオペは
見ていて美しい。
いつか自分たちも
リスペクトされる存在に…!
PROFILE
未来の脳神経外科分野を担っていく若き専攻医たち。彼らは今、どんな思いで日々、研鑽を積んでいるのか。入局への思い、臨床へのやりがいなど、自由に語り合っていただきました。
Q. 入局のきっかけを教えてください。
- 横田
- 医学生の頃、脳神経外科は優秀な人が志す敷居の高い別世界と考えていました。でも研修医2年目、脳神経外科で学ぶ初日に脳腫瘍摘出術を見て「なんて美しい」と感動して、ここに入局したいと強く思ったんです。
- 井面
- そのときの感動、分かります。僕も「すごい、脳神経外科ってこんなオペができるのか」と目を見張りました。
- 横田
- もう一つ、カテーテルによる血栓回収療法で、麻痺症状があっという間に消えた患者さんを目の当たりにして、喜びでいっぱいになりました。カテーテル、腫瘍、脊髄、いずれのオペもすばらしかった。どこでも「このオペは苦手」というのがあるものですが、愛知医大の脳神経外科はそれが一つもない。「ここで頑張ろう」と決意しました。
- 井面
- 僕は医学部に入ったときから脳神経外科医になると決めていました。出身は大阪ですが、初期研修で愛知県にやってきて「愛知医科大がいいよ」と耳にしたんです。さっそく見学に訪れて「ここなら、いろいろなことが勉強できる」と思って入局を決めました。もともと腫瘍分野に興味があったのですが、開頭による顕微鏡手術だけでなくカテーテル治療や鏡視下手術など全てできるのが一番の魅力ですね。
- 阿藤
- 僕の場合、祖母がくも膜下出血を発症したことをきっかけに脳神経外科に興味を抱き、学生時代から医局の先輩方と交流を持つようになって脳外科の道へ進みました。研修医時代、内科系にしようか心揺れた時期もありましたが、今となっては「何を迷っていたのか」と思うほどです。
Q. 脳神経外科で働くようになって気づいたこと、学んだことは?
- 阿藤
- 入局1年目にして、先輩医師の指導のもと、合計150例の入院患者さんを担当したのですが、かなりの経験症例だと自負しています。症例もバリエーションに富んでいて、脳卒中や外傷などの急性期疾患はもちろん、腫瘍については外科的処置から抗がん剤治療まで担いますし、開頭手術や血管内治療、脊髄から末梢神経疾患までと、これほど多要素からなる奥深い診療科は他にないと、日々やりがいを感じます。
- 井面
- 一般的に「専攻医は病棟業務が中心」と思われていますが、ここは全然違います。外来もやるし、主治医として入院から手術そして退院まで管理を任されるケースが多く、市中病院で経験できない珍しい症例に関われるのもありがたいです。
- 横田
- 脳神経というと怖いイメージを持つ人も多いでしょう。麻痺などの重い後遺症が残るのではないかと思いますよね。でも実際は治療によって元気になっていただけるケースをたくさん見てきました。しかも当科は、脳外科分野の第一線で活躍している先生が多くいます。例えば宮地教授は海外の学会で「シゲル!」と声を掛けられる有名人。そんな恵まれた環境で充実した毎日を送っています。
Q. これまでに忘れられないシーンはありますか?
- 井面
- くも膜下出血を発症して昏睡状態で搬送された患者さんのエピソードです。僕がカテーテル治療を担当し、その後リハビリ病院に転院されました。ある日、外来に来てくれて「仕事に復帰できました」と報告を受けたとき「人の役に立つことができた」とうれしく感じました。
- 横田
- 昏睡状態の患者さんが治療後に目覚めたり、手足が動くようになったりするシーンは、言葉で表せないほどの喜びですね。
- 阿藤
- 10代の若い患者さんで急性硬膜外血腫の開頭手術を初めて執刀したときのこと。先輩医師の指導を仰ぎながら、開頭手技から術後管理まで担当し、入院中は毎日ベッドサイドに診に行きました。後遺症もなく元気に退院を迎えた日のことは深く心に残っています。
Q 最後に、お互いの未来にエールを送ってください。
- 井面
- 一番若手の僕から。まず横田先生は緊急手術にも積極的で、教授とも熱い議論をかわすほどアグレッシブ。その勢いを見習いたいです。阿藤先生とはふだん冗談を言い合ったりする仲ですが、真面目で患者さん思い。こういう姿勢をぜひお手本にしたいと思っています。
- 阿藤
- 横田先生、僕が業務に追われているとき、声を掛けてくれたり、相談に乗ってくれたり、いつもありがとうございます。1年の違いだけですが僕にとって「すごっ」とリスペクトする先輩です。1年後輩の井面先生は、成長が驚くほど早いルーキー。これからも若手医師の良い手本でいてほしいですね。
- 横田
- 井面先生は新人と思えないほど知識や技術もあって、周囲のいい刺激になっていると思います。一年後輩の阿藤先生は、患者さんだけでなくスタッフのことも気遣ってくれて、とにかく優しくて働き者。二人とも、これからもずっと一緒に働きましょう!
専門医試験合格者 対談
カテーテル・脊髄・腫瘍など
豊富な症例を学べる
当科の臨床現場こそ、
専門医取得への近道!
PROFILE
脳神経外科医としてステップアップする登竜門といえる「日本脳神経外科学会専門医」。当科は入局4年目という短期間で「一発合格」がスタンダードとなっています。合格率100%のヒミツとは? 2021年合格者の二人の登場です。
- 伊佐治
- 試験を受けるにあたって改めて思ったのが、脳神経外科分野の専門性の広さと深さ。血管内治療、腫瘍、脊髄、外傷、小児と多岐にわたるので、とにかく勉強するしかない! その時間を確保するために、試験前は手術業務をフリーにしていただいたり、救急診療を代わっていただいたりと、医局メンバーのサポートは本当に助かりました。
- 小祝
- 私も緊急当番を減らしてもらった分、ほぼ試験勉強に当てることができました。当直や救急も一か月間免除されたので、まとまった時間をしっかり取ることができたのは、ありがたかったですね。
- 伊佐治
- もう一つ、名古屋大学脳神経外科の勉強会が役に立ちました。試験を受ける10数名が週2回集まって、それぞれテーマを決めて調べた症例などを解説するもので、一人ではとても網羅できない数の症例を学べました。あれが合格の決め手だったかもしれません。
- 小祝
- 確かにあの勉強会は有意義でしたね。ここでは10年前からこの勉強会への参加は恒例になっているらしいですね。コロナ禍でオンラインになってしまったけれど、移動時間など省けて逆に参加しやすかったです。
- 伊佐治
- 試験に向けた座学の勉強も不可欠ですけど、振り返ってみると、やっぱり臨床業務のなかで学んだことが重要だと感じます。愛知医科大は脳神経外科の症例が豊富で、カンファレンスやオペ、月1回の病理検討会などで得た知識や経験はすごく大きい。そういった日々の積み重ねが自分の糧になっていたと思います。ただ、医局の先輩方は全員、一発合格しているのでプレッシャーは大きくて…(笑)。ただでさえ緊張しているのに試験問題を見たとき「なんだ、これは!?」っていう頭が真っ白になってしまう問題がありましたよね。
- 小祝
- ありましたよっ!! 見たことのない問題に一瞬動揺しましたが、先輩方から「手応えは半分なくても大丈夫。時間配分に気をつけて落ち着いて解くように」と事前にアドバイスをいただいていたので焦らず臨むことができました。
- 伊佐治
- とにかくお互い、専門医を取得できて良かった!(笑)。とはいえ、まだこれは脳外科医の第一歩に過ぎません。小祝先生はこれから先、どんなサブスペシャリティを目指していきますか?
- 小祝
- まずは血管内治療を極めたいですね。指導医も取得したいです。かといって血管内だけやるつもりはなくて、外傷や血管障害の開頭手術など基本的なスキルも身に付けたいし、内視鏡の技術認定医も取りたい。資格を持たなくてもすばらしい外科医はたくさんいらっしゃるけれど、資格を持っていれば治療の幅が広がって扱うデバイスも増えるし、後輩に指導もできます。伊佐治先生はどうですか?
- 伊佐治
- 少なくとも血管内治療と脊髄、脳卒中の専門医資格は取得してオールラウンドの脳外科医を目指したいですね。
- 小祝
- サブスペシャリティーを一つずつ極めながらお互いにステップアップしていきましょう。