診療案内

血管内治療

ENDOVASCULAR TREATMENT
血管内治療チーム

MEMBER

Shigeru Miyachi

宮地 茂

Tomotaka Oshima

大島 共貴

Naoki Matsuo

松尾 直樹

Reo Kawaguchi

川口 礼雄

対象としている主な疾患は下記のとおり多岐にわたっています。

  • 脳動脈瘤(破裂・未破裂)
  • 外傷性脳血管障害
  • 頚動脈狭窄症
  • 脳・頭頸部腫瘍(血管に富むもの)
  • 脳塞栓症
  • 脳静脈疾患
  • 頭蓋内動脈狭窄症
  • 開頭手術前の脳機能検査(閉塞試験,誘発試験など)
  • 硬膜動静脈瘻
  • 血管内サンプリング
  • 脳動静脈奇形

下記のような先進医療、高度な医療も積極的に実施しています。

大型脳動脈瘤に対するフローダイバーターを用いた血管内治療

「フローダイバーター」とは大変細い金属のメッシュでできた筒で、血管狭窄病変に対して血管を拡張する目的で用いる「ステント」と形は似ていますが、網の目の細かさと柔らかさが全く異なります。これを血管の中から動脈瘤の入り口の部分(ネック)に渡すことにより、動脈瘤の中の血流が停滞して、次第に血栓化して固まってしまい、最後には瘤は自然にしぼんでしまいます(図1)。従来、瘤の中にコイルを入れていた塞栓術と全くコンセプトが異なる方法で、私たちのこれまでの30例ほどの経験では極めて良好な成績が得られています。「フローダイバーター」の留置にはかなり高度な技術が必要なため、全国でも限られた施設でしか実施が認められておりません。当院は実施可能施設となっておりますので、今後もどんどん適用を拡大していくつもりです。

図1 フローダイバーターステントを用いた脳動脈瘤閉鎖術

図1 フローダイバーターステントを用いた脳動脈瘤閉鎖術

脳塞栓症に対する超急性期血栓回収療法

脳塞栓症は、心臓や大動脈の中にできた血栓がはがれて飛んでいき、脳の主要な動脈に詰まってしまう病気です。特に近年高齢化に伴い急増している心房細動のある患者さんに多く起こります。血管が詰まったまま放置すれば、虚血によりその血管が灌流していた脳の領域は機能が停止し、広範な脳梗塞となります。しかし、詰まってもすぐに再開通すれば、脳梗塞になりかかったところを復活させることができます。この自然再開通を促すために、t-PAという血栓を溶かす薬が開発され、第一選択の治療として用いられてきました。しかしながら、t-PAの適用は基準が厳しい上に、その効果も確実なものではありませんでした。そこで、t-PAの適応にならない例、使用したが再開通が得られなかった例に対して、詰まっている血栓(塞栓子)を血管の中から取り除くのが「血栓回収療法」です。ステントのような金属の網でできた筒型の回収機器(ステントリトリーバー)を閉塞した部分に展開し、塞栓子を網の目に引っ掛けて引っ張り出します(図2)。この治療が開発されてから、再開通率は80%以上と飛躍的に改善しました。しかし、再開通まで時間がかかれば、その間に脳はどんどん壊れていってしまい、再開通しても後遺症が残ってしまします。脳の細胞は虚血にとても弱いので、脳の機能を少しでも多く復活させるには” Time is Brain”といわれるように、時間のロスをなるべく短くすることが大切です。一分でも早く搬送して、できるだけ早くこの治療を開始できるように、当院ではヘリ搬送も含めて万全の救急体制が敷かれています。当センターでさらに良い成果が上がられるように日々努力を続けています。

図2 脳塞栓に対する血栓回収療法

図2 脳塞栓に対する血栓回収療法

頸部頚動脈高度狭窄に対するステント留置術

頸部の頚動脈は、心臓の冠動脈、足の腸骨・大腿動脈と並んで、最も動脈硬化による粥腫(アテローム:コレステロールが血管壁に沈着したもの)がたまりやすい場所です。このプラークといわれるたまりが次第に大きくなってくると、血管が狭窄してきて、脳へ行く血流が減ってくる他、狭窄部で血栓が生じて脳に飛んでいき、脳梗塞を起こします。このような血流の障害が起こると、一時的に脳が停電状態(一過性脳虚血発作(TIA))となり、麻痺や痺れが生じたり、突然片目が見えなくなったりします。脳梗塞の予備軍であるこのような危険な状態から脱け出すには、狭くなった血管を元どおりにするしかありません。従来頸部を切開して頚動脈を露出し、血管壁のプラークを削りとる手術が主流でしたが、現在はステントを用いて血管の中から、プラークごと外へ拡げる治療が行えるようになりました(図3)。この治療では狭くなっているところにカテーテルを通すので、病変部を通過するときに血管を傷つけたり、プラークを剥がしたりしてしまう危険性があります。そのときに生じた破片(デブリ)が脳に飛んでいけばやはり脳梗塞になります。この合併症を防ぐために、バルーン付きのガイドカテーテルとバルーン付きガイドワイヤーを組み合わせて、病変部の前後での血流を一時的に完全遮断し、ステント留置を含む全部の手技が終わったら、堰き止められている血液の中に浮遊しているデブリを血液ごと吸引して取り除くダブルプロテクション方法(シートベルト&エアバッグ法)を用いて治療しています。この方法により、脳梗塞を生じる確率はゼロに近くなり、大変安全な治療が実現されています。

また、頸部だけでなく、頭蓋内の脳動脈にも狭窄が生じ、症状を呈することがあります。頭蓋内血管は壁が薄い上に、頸部に比べ半分ほどの径しかないため、専用のステントを用いて同様に治療を行っています。これらのステント留置術は、局所麻酔下に1時間程度で完了するため、現在大変需要が伸びています。

図3 頸動脈狭窄に対するステントを用いた血管拡張術

図3 頸動脈狭窄に対するステントを用いた血管拡張術

動静脈シャント疾患の液体塞栓物質を用いた治療

脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻などの、動脈と静脈が短絡(シャント)を形成している疾患では、血液の流れが速いため、血管に大きなストレスがかかります。それに伴う脳や神経の症状が現れたり、ときには出血を起こしたりします。この異常な短絡を止めるのに、塞栓術は有用です(図4, 5)。

図4 脳動静脈奇形(AVM)に対する塞栓術

図4 脳動静脈奇形(AVM)に対する塞栓術

図5 硬膜動静脈瘻に対する塞栓術01

図5 硬膜動静脈瘻に対する塞栓術02

図5 硬膜動静脈瘻に対する塞栓術

脳動脈瘤治療に用いるコイルや、接着剤のような液体の塞栓物質を使用して短絡部を塞ぐことで、症状の改善や破裂のリスク軽減に役立っています。開頭手術や定位放射線治療の前処置としても有効とされています。稀な病気ではありますが、当院でも症状がある場合には、積極的に治療を行っています。

また、血管に富む脳腫瘍に対しても、摘出手術の前に液体塞栓物質を用いて栄養動脈を塞栓し、術中の出血量を減らすとともに、手術を容易にするようにしています(図6)。

図6 脳腫瘍(髄膜腫)に対する塞栓術

図6 脳腫瘍(髄膜腫)に対する塞栓術

外傷性脳血管障害に対する緊急治療

頭頸部外傷により、脳にいく血管が破れたり、ちぎれたりすることがあります。血管損傷による出血がひどい場合、特に顔面の外傷で、鼻出血が止まらない時などには、損傷血管を血管内から塞栓します。また血管周囲への強い衝撃や骨折に伴う直接的な圧迫によって、血管が詰まったり、血管壁が解離(外膜と内膜との間に亀裂が生じて裂ける)したりすることがあります。この場合には、上記のステントなどを用いた血管の再建を行い、内腔を確保する緊急血管内治療を行います。

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