【第2腰椎圧迫骨折に対するBKPの実例】
転倒後発症した高齢者。術前、保存治療で腰痛の改善が乏しく、ベッドから起き上がることができませんでしたが、術後早期に疼痛は軽減し、歩行が可能となりました。
脊椎・脊髄、末梢神経外科
圧迫骨折とは、主に脊椎(背骨)に起こる骨折で、椎体と言われる背骨の前方部分が押しつぶされるように変形します。これにより激しい腰痛を生じ、日常生活を送ることが困難となります。外傷や腫瘍により生じるとされていますが、近年の高齢化に伴い、増加傾向にあります。特に、骨粗鬆症が原因で病的骨折を起こすことが知られています。転倒などの外傷に限らず、日常の軽微な外力(くしゃみ、尻もち、体をひねるなど)によって生じることがあります。日本では年間100万人以上が発症しているとされており、一度圧迫骨折を起こした場合、再骨折のリスクは5倍以上にも増加します。そのため、早期診断・早期治療が重要と考えます。
症状としては突然の背中の痛み、腰痛で発症しますが、そのままにしておくと脊椎変形により腰が曲がり(後弯・円背)、身長が縮みます。さらには姿勢変化に伴う慢性的な腰痛へと移行し、日常生活活動度が低下することにより体力及び筋力低下を来します。その結果、健常の人と比べて死亡率も1.6倍にまで上昇すると言われています。
診断方法としてレントゲンやCT、MRIを用います。発症早期ではレントゲンでは判断がつきにくく、CT、MRIが有効とされています。特に、MRIでは損傷の程度を判別することができるため、初期の段階で遷延治癒(保存治療のみでは骨がくっつきにくいこと)の予測を行うことができます。当院では、圧迫骨折の疑いがある方に対してこのような機器を使用し、適切な診断・治療へつなげることを可能とします。さらには骨密度測定機器(DXA)により骨粗鬆症の的確な判断を行います。また、骨折の原因であることが腫瘍である場合には、他科とも連携して集約的治療を提供します。
圧迫骨折の治療としてはお薬や体幹装具の装着による保存的治療が第一選択となります。併せて、骨粗鬆症患者様の場合、それに対する治療薬の使用を行います。このような保存的治療で腰痛が改善しない場合や早期から保存治療が困難と判断された方に対しては、手術加療を行います。手術治療については近年、圧迫骨折の標準的治療とも位置付けられる経皮的椎体形成術や、ボルトを使用した後方固定術、さらには変形が強い場合などには前方から椎体置換術などを行うことがあります。患者様それぞれに応じた適切な治療を提供します。手術後についてはリハビリなどを行い、早期社会復帰を向けた継続的治療を行います。
以下に代表的手術をお示しします。
BKPは圧迫骨折に対する低侵襲治療の一つで、椎体の変形修復と速やかな腰痛軽減(除痛効果)を目的とした手術です。
全身麻酔で手術を行います。手術時間は20分程度です。入院期間は2〜7日程度です。
骨折した椎体に対して、5mm程度の小切開の傷口を2つ作成し、細い器具を椎体内に留置し、バルーン(風船)で潰れた背骨を復元し、バルーンで作成したスペースに骨セメントを流し込みます。
この手術のメリットは術直後から痛みが軽くなり、体を起こしたり、歩くことが楽になります。また、骨が潰れて背中が曲がるのを防ぎやすくなります。非常に侵襲度が低く、効率的な効果を生み出すことができます。
【第2腰椎圧迫骨折に対するBKPの実例】
転倒後発症した高齢者。術前、保存治療で腰痛の改善が乏しく、ベッドから起き上がることができませんでしたが、術後早期に疼痛は軽減し、歩行が可能となりました。
経皮的椎体形成術は有効な治療ではありますが、骨折の程度が強い場合や骨折により神経障害を来した方には単独での使用が難しいことがあります。そのような場合には、椎体形成術にボルトを併用する必要があります。患者様の状態に応じて適切な治療を提供します。
【第3腰椎圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術+後方除圧固定術の実例】
椎体の変形が強く、一部の骨が椎体の後ろを通る神経を圧迫することで腰痛に加えて下肢痛を生じていました。折れた椎体自体にセメントを注入し、その上下の椎体にもボルトを打ち込み椎体の安定化をえました。さらに狭くなった神経の通り道を広げるために背中から背中から骨の一部を切除する除圧術を行っています。術後から腰痛及び下肢痛は軽減し、リハビリを開始することができています。